本時のねらい:弱者に対して譲ったり配慮したりすることはもちろん道徳において重要である。しかし、譲られる側にも道徳的にすべきことがあることもまた事実である。しかし、実際には配慮されることが多くなるにつれていつしかそれが当たり前となり、基本的なマナーを守れなくなっている人も存在する。また、配慮すべき対象は必ずしも目に見えてわかるわけではない。しかし、現実にはそれを理解せず、自分の思い込みをそのまま相手にぶつけてしまう人もいる。そのため、高校への進学で公共交通機関を日常的に利用するようになることも考えられる中学校3年生に対し、今一度公共の場における譲り合いのあり方について考えたいと思い、この授業の主題設定の理由、並びにねらいとした。〔 内容項目 B-8 礼儀、及びB-10 相互理解・寛容〕
主な活動 | 発問 | 児童・生徒の反応 | 素材 | コツ・アイデア | 追加資料 |
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導入 | 1. あなたは、他の人に何かを譲られたり、配慮してもらったりした経験がありますか?あるとしたらどんなこと? 2. 譲られたり配慮されたりしたとき、あなたはどのような対応をしますか?あるいはしましたか? 3. 譲られることが段々と当たり前になった経験は? |
腕をけがした時、同級生に荷物を運んでもらった。 重い荷物を持っていた時、乗っていた電車の乗客が席を譲ってくれた。 ない/思い出せない ありがとうございます。と言った。 突然のことに驚き、小さくお辞儀する程度しかできなかった。 ケガをしていた期間が長期にわたった時、それが完治してその配慮がなくなった時、その存在の大きさに気づいた。 特にない |
特に3についてはこの議題において批判的になりがちで、そこから生徒間での批判などにつながりやすいことから無理に発言させない。できればGoogleフォームなど匿名で意見を共有できるようなシステムを活用する。 | ||
展開 | 1.1. あなたは、この投稿者のような経験がありますか? |
バスで席に座っていたら、あとから来たおじいさんに「席を年寄りに譲らんかい!」と叱られた。「すみません。」と謝ったが、その態度には納得できなかった。 駅でエレベーターを利用したら、待っていた全員が乗れたにも関わらず、「若い人はこんなの使っちゃいけないんだよ」とおばあさんに言われた。面倒なので取り合わなかった。 特になし 電車に間に合わないかもしれず急いでいたため、外見上は健康に見える男性にいらだっていた。 同じような事例でいつも譲られるため、それが当たり前のように感じていた。 |
文章読解まで含めると質問に対する答えを発表できる人数が限られるが、授業プリントなどに記入させるか、Googleフォームなどによって全員に記入させて集めてからそのうちのいくつかを教師が取り上げる方式にすることを検討する。 この記事には筆者の私見が含まれているが、生徒の自由な考えを求めるため、その部分は授業終盤まで出さないようにする。 |
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2.この記事の登場人物の問題点及びこの事象が発生した原因を挙げよ | 女性は投稿者を見た目だけで健康と判断し、非難の言葉を浴びせたが、必ずしも目に見えるものだけではないことを認識できていなかったことが問題。 そもそも譲り合いは強制的に行なわれているわけではなく、それを求めるのであればお願いするような態度であるのが筋。 絶対にしなければならないというわけではないが、投稿者もケガをしていることを周囲にわかりやすくして誤解を防ぐことはできたはずである。 |
ここは最も生徒らの考えを拾い上げることに時間を費やすべきである。可能な限り小集団での活動をしたのちに全体での意見共有とする。この際、少数意見が消えてしまいやすいため、予め授業プリントなどに個人の意見を書いてからグループワークに移行するとよいと考えられる。この場合、可能な限り授業プリントは授業終了後回収し、評価につなげる。 全体での共有中、意見が分かれそうなど議論が深まると考えられるときは、教師はそれについて追加で発問するものとする。 |
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3.国土交通省や鉄道・バス会社などは、車椅子・ベビーカー利用者、お年寄りや妊娠中の方、ケガをしている方、その他体の不自由な利用者への譲り合いを促す文書を作成している。それについて今回の事案を踏まえ、改善点はあるか。 | 譲られる側にも限界がある旨を表示する。 譲られる側に対して、ほかに同様の人がいることを周知するような掲示も併せて作成する。 外見ではわからないケガや障がいについて周知する掲示を行なう。 そもそも、このようなことは任意の譲り合いであるから、現在行われている取り組みも含めて不要。 「どなたでもご利用いただけます」の掲示を増やす。 |
展開2と同様(もともと、これらは展開の後半部分として同一のものだったため) | |||
まとめ | 振り返り | 考え方の一つとして、この記事に示されていた筆者の考えを読む。その後、同様の目的で現在の法令や国土交通省などの通達から、求められる周囲の人間の配慮を読み取り、どうすべきかを考えるきっかけとする。 | ここで取り扱うものはあくまで特定の人や組織の考え方で、適切な行動はその時々に依って異なることを伝える。 すべて当事者はその状況において最大多数の最大幸福が得られるような行動は何かを考えることが重要と説明する。 |
素材 | 追加資料 | |
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参考資料 |
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学年 | 中3 |
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カテゴリ(教科) | 道徳 |
メモ: | 「<自分勝手!>【前編】ベビーカーママに「エレベーター乗るの?」と言われた。足をケガしているのに!」 出典( https://select.mamastar.jp/753444 ) 〈展開2の参考資料〉必要に応じて黒板に貼る・電子黒板に表示する。 エレベーターの利用についてのポスター等による呼びかけについてhttps://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/content/001375728.pdf |
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- ●評価の観点:
- この問題に対して深く考えられているか、それがこの授業の問題提起した事案に対して何らかの解決策になっているかで行なう。考えが現在の社会通念に沿うか否かは評価対象に原則しない。