タイトル:

空間は違えど相手は人間

本時のねらい:道徳では人間や自然との付き合いにおいて何が大切か、何が正しいかを考えてきた。この思考を通すことによって、社会の中の人間としての価値観や人格は定まってゆく。
さて、日本ではメタバース(仮想空間スペース)、SNS、オンラインゲームなどの、現実にはない空間の導入・進歩が進んでいる。商談や買い物の取引に使われるのはもちろん、アバターやNN(ニックネーム)などを利用して、ある程度の匿名性を持ったまま人間関係を持つ機会が多くなってきている。とくにこの匿名性を使えば、ひとりの人間が現実世界の人間関係とはまた別の人間関係を構築することも可能だ、かつ別の人格を持つことも容易だ。
だが、ネットの世界は別空間だから、人の心を傷つけてもよいのだろうか。現実の人間関係に影響しないなら、仮想空間で道徳心を欠如して行動してもよいのか。そこを考えてみたい。
このテーマは現実世界的な道徳を仮想空間にも拡張・投影する、というねらいがあるため、道徳の経験値があるほどによく、道徳授業をまとめにかかる中学2年生後半~3年生という時期に適している。また中学から高校という環境変化と新たな人間関係構築を控えている彼らにとって、この「友達が変わっても道徳心は捨てない」考えは無関係ではないとも考える。

主な活動 発問 児童・生徒の反応 素材 コツ・アイデア 追加資料
導入 1.あなたはインターネットやオンラインゲームを通じて「リアルであったことない人」と関わったことがあるか

2.そのときどんな関わりをしているか
□オンラインゲームが多いと思われる

□協力や対戦をした
その時の社会背景を踏まえて導入を設定する。
ただゲームを話題とする場合は受験期は控えたい
展開

1.記事(の最後)を見て、インターネット上ではトラブルがあることを見る。
これを踏まえ、自分も似たような経験がないか思い出してみよう

また、他の人間からネット上で悪口を言われるとどんな気分になってしまうか?

□ネット上で実際に悪口を言った・言われた
□経験はないが、そういった話を人伝に聞いた


□実際知らない人から言われると気味が悪い
□先生に言ってもどこの誰だかわからないから注意してもらえない
□相手はストレス発散してるのに自分はストレス蓄積するから不条理だ
ちなみにネットの誹謗中傷を経験したことがなく聞いたこともない生徒に対しては「登校して下駄箱見たら悪口書かれたメモが入れられていた感覚」と伝える。
ネットが分からなくても話し合いには参加してほしい
2.ネット上で悪口や暴言、不快な発言をするのはどういう心境なのだろう?
相手が知らない人間のほうが言いやすいのかな?

どちらにしても、匿名性があるから悪口を言ってもいいのかな。
□日常的なイライラを、自分に返ってこない方向に発散しているから
□顔を見せないので悪口をいっても現実の友人から悪印象を受けないから

□お互い匿名でも相手は人間なので悪口はダメ
あくまで道徳を匿名社会にも落とし込んで各々考えてほしいので、相手の気持ちを推し測るという観点で考えたい。
3.いままで考えた道徳の価値観は、匿名関係でも無駄にならないのだろうか? □個人情報とか、嘘をついてもいいかどうかは難しい
→では何については嘘をついたらダメなのだろう
□メタバース上の席を高齢者らに譲る必要はないのでは
→アバターの体が不自由でないなら人の「座りたい」を無視してもいいのかな
□いじめを見かけたら止めるべきなのかな
→他人だから関わらなくてもいいのかな、でもいじめられている人の居場所は守りたいよね
□陰口ってどうなの?
→ネットの公開掲示板に書くとすぐばれて本人やそのファンを不快にしてしまうよね。友人との閉鎖的コミュニティで言うのはどうだろう。それは友人が不快な気持ちにならないかな。
いままで授業で扱ったものを中心に考える。ただしもし生徒らが思いついた場面があるならそれについても考えよう。
メタバースでは誰しも健康で、直接的暴力もなく、さらに人間関係もお互いの顔を知らないもしくは今日限りの関係であったりするので、現実の正しい行動をそのまま使えるとは限らない。
でも重要なのは「相手も人間」ということであり、道徳観で言動を考えるべきであることだ。
まとめ 授業をまとめる 板書を振り返り、人を嫌な気持ちにさせることはメタバース内ではどういうスタンスになるかよく考える。 「ちなみにネット上でいじめを受けたら先生に言ってください。いじめとして正式に対応できます。
また大人になってもネットで酷い悪口やデマをぶつけられたら、相手を弁護士通して訴えることも不可能ではないですからね。賠償させることだってあります」
「ネット上では今日も悪口や嫌がらせが飛んでいると思いますが、『他の人がやってるから』とかで流されずに、今回で考えた感情・意見を大切にしてほしいと思います」
  素材 追加資料
参考資料
  1. メタバース道徳
学年 中2  中3  
カテゴリ(教科) 道徳  情報教育  
メモ: 内容項目は中学校B9「相互理解・寛容」が中心となる。もちろん展開の3で扱う内容によっては他も含まれる。
なお今回の授業はグループ班を作ってもよいが、初めから指名や挙手によって意見を出していく形を想定している
評価の観点:
・問題となることをする側とそれを見る側の双方に関して気持ちを考えて、様々な事案や課題に対し自分なりの判断で考えることができた。
・これまで学習した道徳心や道徳観をメタバース空間等にも写して考えようとした。