本時のねらい:ALS患者に委託され、殺人を行った医師が逮捕された事件を通じて、自死を希望しながらも自死ができない人間の自殺(殺害)を手助けすることや難病患者の安楽死制度の是非について法律的な観点、道徳的な観点、患者の観点、家族の観点、第3者の観点など異なる観点から考えることで、遵法精神や公徳心を養う(B-12)とともに相互理解を深める(C-11)ことを目的とする。
主な活動 | 発問 | 児童・生徒の反応 | 素材 | コツ・アイデア | 追加資料 |
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導入 | ・森鷗外の「高瀬舟」を知っているか生徒に尋ねる。 ・端的に内容を知らせる。 |
・知っている ・知らない ・森鷗外って誰 |
・あくまで確認と端的な内容を知らせるだけにとどめる。 ・高瀬舟の流れを漫画化したものを見せてみる |
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展開 | 1.・嘱託殺人の事件の記事を配り、生徒に読んでもらい、医師の行ったことに対して、現在の自分の立場で賛成か否かで意見を出してもらう。 |
・苦しんでいる人を助けようとしたことには賛成する。 ・法律に違反しているから反対。 ・なんであっても殺人はだめ |
・道徳的な観点に沿った意見が多い場合は法律的な観点を、法律的な観点からの意見が多い場合は、道徳的な観点からの意見はないか尋ねてみる。 ・ここではあくまで第3者の生徒本人の立場からの意見を述べてもらう。 ・患者や家族、医師などの立場に立った意見については次の展開で発表してもらう。 |
ALS殺人 |
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2.・医師の行った行動が正しいと評価されるようになった場合、良いことはなんだろう。患者の視点、家族の視点、社会的な観点から考えてみよう。 | ・患者の立場では、長い間苦痛を感じずに済む ・家族は必要以上の介護をする必要がなくなる ・医者は苦しむ人をこれ以上延命させずに済む。 |
・ここではあくまで良いことのみ発表するようにし、反対意見があれば3.で述べてもらうようにする。 ・意見が出にくい場合は、様々な観点から考えても良いものとする。その際には「どの立場からみて」良いと感じたのか立場を伝えてもらう。 ・1.で反対意見であった人にも尋ねるようにする。 ・臓器提供を必要とする人などにも臓器提供機会が増えやすくなる、医療リソースがほかの部分に割かれやすくなるなど第3者の観点からのメリットもアドバイスしたりなどする。 |
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3.・医師の行った行動が正しいと評価されるようになった場合、悪いことはなんだろう。患者の視点、家族の視点、社会的な観点から考えてみよう。 | ・患者さんが本当は生きたいのに、家族や周りの安楽死が正しいという風潮から生きづらいと感じるかもしれない。 ・安楽死の基準がどんどん緩くなるかもしれない。 ・ヘルパーさんの仕事が減るかもしれない ・命を助けるはずの医師が人を殺めることになり、医師同士で対立が起こるかもしれない。 |
・悪いことのみ発表してもらうようにする。 ・1.で賛成であった人にも尋ねるようにする。 ・意見が余りでなくなった場合、患者の意思とは異なる強引な安楽死の横行や、患者さんの社会的な立場の不安定化などがあることを投げかけてみる。 |
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まとめ | ・記事の終わりで述べられている、安楽死を認めるケースについて確認をおこない、現行の法律では今回のケースは認められないことを確認するとともに、海外では安楽死が認められるケースがあることを確認する。 ・立場により医師の行った行動を正しい/正しくないと考えることがあるなど、考え方が異なることの確認を行い、自分と異なる考え方を受け入れることの重要性を確認してもらう。 |
・展開の中で自分と意見が似ていたものや、正反対だったものなどについてどう感じたかワークシートなどに記入してもらう。 ・「現在」の「日本」では今回のケースは認められないが、「未来」の「日本」では認められているかもしれないこと、「現在」の「日本以外の国」では認められていることもあることを伝えることで、環境や時代、国によっては異なる考え方が存在することを確認し、生徒個人が自分の意見に固執せずに他人の意見を受け入れることの重要性を感じられるようにしたい。 |
- ●評価の観点:
- ・生徒が異なる立場の人の意見に耳を傾け、自分なりの意見を考えることができたかどうか。(B-11)
・法律の良い点や悪い点について考え、法律を守ることにより保たれていることは何かを考えられたかどうか。(C-12)